今晩は、ミニキャッパー周平です。第3回ジャンプホラー小説大賞、絶賛募集中です‼ 第2回ジャンプホラー小説大賞の受賞作2冊『たとえあなたが骨になっても』(『先輩が骨になった』改題)『舌の上の君』の発売日も、(たぶん)来週にはここでお伝えできるかと思います。
さて、このブログではサードシーズン以降、ご紹介する本の画像を、私がスマホで撮影して掲載しています。長年ガラケーで通していたのですが、「連絡が取りづらい」と編集部一同の非難を浴び、とうとう昨年スマホデビューしたわけです。まだ慣れない文明の利器に四苦八苦しておりますが、それはさておき。
本日は、そんなスマホを用いて「新しい都市伝説」を生み出そうとする野心作、最東対地『夜葬』です。
スコップで顔を抉り取られた惨殺死体が、日本全国で相次いで発見される。連続猟奇殺人事件として話題が沸騰する中、TV番組制作会社の袋田翼と朝倉三緒は、事件の真相を追うべく調査を開始した。しかし、唯一の情報提供者が、不可解な証言を残して失踪を遂げてしまう。
同じころ、夜のコンビニで一冊の本「最恐スポットナビ」を手に入れた青年は、本を通じて「鈍振村(どんぶりむら)」の都市伝説について知る。「鈍振村」のグロテスクな葬儀の風習に背筋を寒くしていたその時、突然、自分のスマホが受信を告げ、音声ガイドを開始し……
本作のイチ押しポイントは何といっても、オリジナル怪談「どんぶりさん」。このファンシーな名前からは想像できない、執拗で不気味な性質をもつモンスターです。
冒頭で明かされるのですが、鈍振村で行われていた「夜葬」とは、死んだ人の顔を抉り取って、そこに炊き立ての白飯を詰めるという奇奇怪怪なもの。葬儀では、そのご飯を皆で食べるそうです(悲鳴)。作中で人々を餌食にする「どんぶりさん」は、そんなプリミティブな因習から生まれた怪異なのですが、一方で、LINEのようなアプリでこちらにメッセージを送り付け、更にスマホの音声ガイドで接近を知らせてくる現代的な一面もあります。『目的地が設定されました』『このまま道なりです』『間もなく目的地付近です』などという、皆さんお馴染みであろうあのボイスがスマホから鳴り響き、逃げても逃げても「どんぶりさん」が追いかけてくる様は、2000年代にブームになった怪談「メリーさん」を更に現代的にアップデートしたような趣きも感じられます。私は、深夜スマホを横に置いて一人この本を読んでいたので、着信があるたびに心臓が止まりそうになりました。
読者の胸に強烈なインパクトを残していく「どんぶりさん」。もともとは個人の作家による創作であった怪談が、時代を経るうちに「実話」として語られていく、という例は古今東西にある訳ですが、もしかしたら十年後、本当に、都市伝説や怪談の実録本に、鈍振村と「どんぶりさん」が実在の怪異として語られる日が来るかも知れません。
(過去記事ハイパーリンク)追いかけてくる怪異といえば、この回でご紹介した「おもひで女」もお勧めです。
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