今晩は、ミニキャッパー周平です。第2回ジャンプホラー小説大賞受賞の2冊『たとえあなたが骨になっても』(『先輩が骨になった』改題)、『舌の上の君』6月発売予定となりました。詳報は追ってお伝えしますのでどうぞお楽しみに‼ 第3回ジャンプホラー小説大賞も募集中です‼
さて、ホラー小説には様々なジャンルが存在しますが、私が一番好きといっても過言ではないのが、「神隠し」ものです。そもそもは、子供のころ、『ドラえもん
のび太の日本誕生』で、ドラえもんが世界中の神隠し事件について具体例を挙げて説明しているシーンを見て、幼心にトラウマを刻みつけられたのがきっかけで、松谷みよ子『現代民話考』の神隠しパートで興奮したり、小田雅久仁「11階」(『S-Fマガジン』2013年6月号)に感動したり……というわけで、今回は昨年書かれた「神隠し」テーマの一編、名梁和泉『マガイの子』です。
坂見風哩・坂見怜治姉弟の生まれ育った鞍臥村には、とある魔物の伝承が存在した。村の山には魔物「マガイ」が住んでおり、神隠しに遭った子供を食い殺して、犠牲者そっくりの偽物、「マガイの子」を産み落とす。一度失踪してから帰ってきた子供は、「マガイの子」に成り代わられた偽物であり、成長するにつれて獰猛な本性を現し、周囲の人間に災いをもたらすのだ――というもの。
風哩は小学六年生の時、山で「神隠し」に遭った。彼女は弟によって見つけ出されたため無事に生還したが、風哩に同行していた村の若者は変死体で発見された。それ以後、土地の大人たちばかりか、実母からも、「マガイの子」であるという疑念を向けられることになった風哩を、怜治はただ一人の味方として支え続けた。
そして、神隠し事件から八年。村を出て、美大生となった風哩の周りでは、人間の理解を超えた事件が起こる。一方、村に残った怜治の周囲では、新興宗教団体の進出によって、迷信が更に深まっていく。それらと時を同じくして、風哩よりも前に「神隠し」に遭い、同じく「マガイの子」疑惑を掛けられていた村の男が、殺人容疑で指名手配される――
「マガイ」は実在するのか? 八年前の神隠し事件で何が起こったのか? 風哩は人間なのか、それとも「マガイの子」なのか? そんな謎の数々に引きこまれ、一晩で読み切りました。中盤では、神隠しと子供の帰還という現象に対する作者なりの回答が示されており、そこからほの見える幻想的な光景と、特異かつ強固な世界観が、(たとえば、クトゥルー神話が持つ吸引力にも通じるような)魅力となっています。絶望的な状況において一筋の光となる、互いを想い合う姉弟の絆も美しいです。
さて、サードシーズン用に紹介するために準備したネタが早くも尽きました。また神保町の書店を巡り、ホラー小説棚の周りでうろちょろする日が始まるようです。