2017年12月16日土曜日

二十二年前の猟奇殺人の残滓が、村を訪れた者たちに襲い掛かる――『乙霧村の七人』


今晩は、ミニキャッパー周平です。締め切りまであと約半年、第4回ジャンプホラー小説大賞、絶賛募集中です。ホラー賞への応募作品の中には「村」をテーマにしたものもよく見受けられます。祟りと殺人の舞台「八つ墓村」、ゲーム『ひぐらしのなく頃に』の「雛見沢村」、かつてブームだった都市伝説「杉沢村」などなど、奇妙な因習や信仰が残っている閉鎖された場所として、「村」のもつイメージは強固なのかもしれません。

というわけで、本日の一冊は、伊岡瞬『乙霧村の七人』。


 




長野県木曽郡乙霧村。そこは、江戸期から身内殺しの因縁が残る土地であり、二十二年前にも「乙霧村の五人殺し」と呼ばれる一家惨殺事件が起きた場所だった。その事件は、ノンフィクション作家・泉蓮の著作によって一躍世に広まった。泉蓮が顧問を務める、立明大学の文学サークル『ヴェリテ』のメンバー六人は、合宿の途中で乙霧村を訪問する。既に無人となった、かつて惨劇が起きた集落に踏み込み、不謹慎な悪ふざけをしていた彼らだったが、その眼前に、正体不明の大男が現れる。男は突如豹変し、凶器をもってメンバーに襲い掛かる――

「昔、猟奇殺人事件の起こった現場に、興味本位のグループが訪れ、かつての事件の犯人を思わせる怪人に襲われ、必死で逃げ回る」という、もう皆殺しエンドしか待っていなさそうな導入ですが、一筋縄でいかないのは、この作品がホラーサスペンスの形を借りたミステリでもあるということ。「犠牲者」たるサークルメンバー六人がみな腹に一物秘めた連中、秘密を抱えた人間です。誰よりも、語り手である女性・有里の秘密が一番大きいのですが……

「第一部」は、サークルメンバーのうち、最も頼りになりそうな者が真っ先に襲われて意識不明になり、残るメンバーたちが、橋一本を除いて脱出経路のない小さな集落を(かなり足を引っ張り合いながら)逃げ惑うものの、斧を構えた男に襲われたり捕まったりして、一人また一人と消えていく、という脱出ホラー。と同時に、男の正体は何者か、なぜ彼らを狙うのか、の手がかりが示されていく「問題編」でもあります。

そして「第二部」は、関係者の証言が集められ、第一部に散りばめられた伏線、ミステリ的な仕掛けが丁寧に回収されていく「回答編」となっており、サークルメンバーを襲った男の正体と動機、二十二年前に起きた惨劇、それら全ての意味が裏返るという衝撃のどんでん返しが待っています。謎解きが好きな読者の方は、「第一部」を読みながら、自分なりに真相を推理してみるのも良いかもしれません。

今年の「ミニキャッパー周平の百物語」もラストスパート、次回の更新は、(たぶん)あと2回。次回は重量級の作品をご紹介したいと思います。