今晩は、ミニキャッパー周平です。タイトルが印象的な本というのは、ついつい手にとってしまいがちなものです。ホラーでいえば、『メドゥサ、鏡をごらん』『独白するユニバーサル横メルカトル』『ずっとお城で暮らしてる』などのタイトルが個人的にお気に入りです。今回ご紹介する本も、タイトルインパクト抜群。
というわけで今日の一冊は、日向奈くらら『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』です。
南城高校2年C組担任の教師・北原奈保子は、2学期が始まる直前に、自身の生徒のうち4人が謎の失踪を遂げてしまったことで憔悴していた。更に9月2日の深夜、別の生徒たちから奈保子のもとに、助けを求めるLINEが届く。夜の校舎に駆けつけ、クラスに辿り着いた彼女を待ち構えていたのは、カッターや箒やバットや三角定規など、教室内のありとあらゆるものを用いて殺し合いを果たした24人の生徒の死体だった。
絶望の中で奈保子は、1学期には平穏だったクラスの雰囲気を一変させた事件、ある女生徒に対する攻撃が始まった日のことを思い出す。一方、事件の捜査に乗り出した埼玉県警の野々村刑事は、C組内で、クラスぐるみの苛烈ないじめが発生していたこと、それが大量死の真相に繋がっていることに気付く。
学園ホラーといえば、呪いなどで生徒がひとりまたひとりと死んでいく展開が定番ですが、この小説はタイトル通り、冒頭でいきなり24人死んでいます。この時点で既に、失踪中の4人を残してクラスが壊滅しているのですが、24人を死なせた「超常的な力」の存在を教師と刑事が追ううちに、犠牲者はクラス外学校外にまで広がり更に増えていきます。肉親さえ殺し合わせるその「力」が生み出す死に様、殺され方は相当に痛々しいです(絵面的にも、精神的にも)。
ただ超常的な部分以外でも、読者の背筋を寒くさせる要素は多数あり、たとえばいじめの内容もSNS上での中傷やクラス内での暴力行為に留まらず、拉致監禁した上での薬品を使った拷問など、常軌を逸したものです。そのうえ、事件の真相を追いかける側の野々村刑事も、もともと暴力への欲求にとりつかれており、実娘に対して手を上げるなど危うい性質を備えていて、破滅へまっしぐらに向かっていきます。この作品で描き出され、あぶり出されていくのは、人間のもつ根源的な「暴力へ向かう衝動」そのものの「怖さ」なのです。
しかしながら、物語の根幹にあるのは、強者に虐げられた者たちの儚い連帯と反撃であり、そこには恐怖とともに、深い悲しみも隠されています。28人中24人までが第1章で死ぬクラスに、生存者や希望は残されるのかどうか、ぜひ見届けてみてください。