2015年1月9日金曜日

学園ホラー編(3)『Another』

  
 ホラーにも「萌え」があっていいと思うんです。
 むしろキャラの魅力は、極限状況下でこそ輝くのです!

 ……失礼、少し取り乱しました。

 ホラー作品の一部には、圧倒的な存在感で、読者の心に強い印象を残すキャラクターがいます。自分はどうしても女性キャラにばかり目が行ってしまいますが、小説だとレ・ファニュの創り上げたカーミラとか、フョードル・ソログープの『毒の園』のヒロインとか、漫画だと『黄昏乙女×アムネジア』の庚夕子とかが、私にとってイイネ!ボタンを10回くらい押したいキャラです。そして、綾辻行人が生み出した本作のヒロインも、また。

 という訳で、学園ホラー編、第3回目は綾辻行人『Another』。
  漫画化やアニメ化もされた大ヒット作です。



 家庭の事情で、東京から、地方の夜見北中学校に転校してきた恒一。しかし、転入先のクラスメートたちは何かを隠しているようで……更に、恒一が眼帯姿のとある少女に近づいたことから、彼の運命は狂い始める。級友や教師たちの異様な行動と、相次ぐ死の待ち受ける、悪夢の学校生活へ向かって。

 優れたホラーでありながら、ミステリの名匠・綾辻行人の手腕が存分に発揮された作品でもあります。
 前半では、「何が起きているのか」を理解できず恐怖に翻弄される主人公の姿が描かれます。しかし、主人公が超自然的な現象を「ルール」として受け入れた後半からは、サスペンスホラーでありながら、元凶を突きとめ、事態を止めようとするミステリ的な側面が現れます。終盤に訪れる驚愕も、ミステリの手練ならではの仕掛けです。

 そして先述の通り、ヒロインである「見崎鳴」の存在感。
 初見の浮世離れした妖しさや儚さは勿論のこと。主人公の目を通じて描かれる彼女の姿は、謎のベールに包まれた前半から、正体の何割かが明らかになる中盤、真意が明かされる後半と、刻々とその印象を変えていき、読者はそれを追体験していくことになります。計算された「見せ方」で提示されるそのキャラ造形に、惹きつけられずにはいられません。これは萌えだと思います!

 なお、ジャンプホラー小説大賞でも、私がキャラにオリジナリティと魅力を感じた作品は、問答無用で一次審査を通過させます。


 さて、『学園ホラー編』はここでいったん休憩。次回からのキーワードは「時間」です。

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