2015年1月6日火曜日

学園ホラー編(2)『ラガド 煉獄の教室』

 物語を愛する皆様、こんばんは。JBOOKS編集部員のミニキャッパー周平です。

 普通の小説は、その物語にのめり込んでいる読者や、その作品を読み終えた読者の心を動かすものです。
 けれど、世の中には、書店でパラパラめくっているだけで「?!」と驚かされ、慌ててレジまで運ばされてしまう、そういう「普通ではない」特徴を持った本もあるのです。

 たとえば、文庫で400ページくらいの物語の中に(絵ではなく)「図」が100枚近く収められている、とか。

 という訳で、今宵ご紹介するのは「学園ホラー」というよりも「教室ホラー」とでも呼ぶべき異色作、両角長彦『ラガド 煉獄の教室』です。



 高校の教室に刃物を持った男が侵入し、一人の女子生徒が刺殺された。犯人逮捕ののち、警察やマスコミによって、犯行当時の状況を再現する実験が行われる。
 ところが、犯人の供述も、生き延びた生徒たちの証言も、なぜか曖昧だったり互いに矛盾していたり、信頼が置けない。
 手がかりや新証言のたびに、『再現』される状況は二転三転する。真相究明は混迷を極め、警察やマスコミが右往左往させられる中、過去に起こった悲劇や、教室内の闇が暴き出されていく……。

 先に述べた「図」とは、凶行が行われた際の教室での生徒・犯人の動きを示した見取り図。様々な推理・推測によって目まぐるしく変わっていく、「犯行当時の教室内で何が起こっていたか」の仮説を読者に提示する役割を果たしています。

 この膨大な図に加えて、生徒たち、教師、保護者、警察、マスコミなど次々に焦点を変えていくプロット、時折挟まれるインタビューや尋問形式での語りも相まって、迷宮に誘われるような読書体験を味わえるはずです。

 そういった特殊形式を積み上げて、辿り着くその「瞬間」――物語の終盤近くで示される、凶行時の教室の異様な「光景」には、戦慄を禁じえません。実はミステリの新人賞を受賞した作品なのですが、超常的な部分もあり、審査員も「SFやホラーの志向性を」見抜き、更に(前回ご紹介した)『六番目の小夜子』の体育館シーンにも似た戦慄を感じ取ったとのこと。私自身も、この作品は恐るべき「決定的な一瞬」めがけて構成された、異色のホラーとして取り上げさせてもらいました。


 さて、実は先ほど述べた、この作品を評価された審査員というのはミステリ作家の綾辻行人先生なのです。という訳で次回ご紹介するのは、綾辻行人先生の学園ホラー……と言えば?




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