こんばんは、ミニキャッパー周平です。第5回ジャンプホラー小説大賞の〆切は6月30日。志望者の皆さんはぜひラストスパートをかけてください。そして、第4回ジャンプホラー小説大賞受賞作『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』の発売日(6/19)がいよいよ迫ってきました!
普段はこのコーナー『ミニキャッパー周平の百物語』で弊社の本・他社の本を問わず気になるホラーを紹介しているため、「あいつは角川ホラー文庫の回し者なのではないか」と社内で後ろ指さされていると噂の私ですが、今回は、年に一度の受賞作ダイレクトマーケティング回。折輝真透『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』。
今から5年ほど前。米国で、悪性腫瘍を根治するための研究中に、白血球を変異させるTLCウイルスが偶然誕生し、外部に漏れてしまう。TLCウイルスによって変異した白血球は肉体を徐々に腐敗させ、生物をいわゆる“ゾンビ”に変えてしまうのだ。幸いなことに、ワクチンの開発によってゾンビパンデミックは阻止された。各国は公共放送などを通じ、人々にワクチン接種を促している。
そんな時代に、ワクチン未接種だった大学2年生の藤堂翔は、文芸部の悪友たちと肝試しで埼玉の廃病院に訪れ、そこで遭遇したゾンビに噛まれてしまう。
……ストーリー開始早々いの一番にゾンビ化してしまうという、ゾンビもの小説の主人公としてはあるまじき失態を犯してしまった藤堂は、国立病院内のゾンビ治療施設に通うことになり、ゾンビ化患者の自助グループ《ゾンビの会》に入会する。ゾンビ化は腐敗の度合いによってステージが5段階に振り分けられており、脳が侵される《ステージ5》まで進行してしまうと、人権が剥奪され処理されることになる。藤堂は、《ゾンビの会》で、腐敗した足を切断し、車椅子に座っている《ステージ3》の少女・美也と知り合う……。
という訳で本書は、”ゾンビ化“という不治の死病に侵された若者の異色闘病小説です。しかしそれ以上に、色々こじらせた大学生の青春小説でもあります。フィッツジェラルドを愛し、韜晦癖のある藤堂が、ダメ人間比率の高い文芸部メンバーとつるみ、何とかゾンビなりに青春を謳歌しようとして空回りしていくおかしみとかなしみに、個人的には森見登美彦のデビュー作『太陽の塔』をほのかに連想しました。
作中で特に存在感を放っているキャラは、文芸部に居座る“エナさん”こと江波奈美。死病に侵されている藤堂の心情も鑑みず、ゾンビ化患者に与えられるクスリをぶん捕ろうとするヤバい女子。その行動は自分勝手さが度を越していて一種の爽快感さえ感じられます。
安楽死というタイムリミットに抗って、ゾンビは青春の思い出を残すことができるのか――ジャンプホラー小説大賞《金賞》受賞のそんな本書は、6月19日発売。Amazonほかで予約も始まっています。
発売日前後には、note上で無料一部公開も行う予定です。同日発売の、直木賞作家・東山彰良の最新作、AI×悪魔のバディもの『DEVIL'S DOOR』も宜しくお願いいたします!