2019年5月18日土曜日

令和のスクリーンに「彼女」が復活! 鈴木光司原作・杉原憲明脚本・牧野修著『貞子』


今晩は、ミニキャッパー周平です。第5回ジャンプホラー小説大賞の〆切(6/30)が迫りつつありますが、第4回ジャンプホラー小説大賞金賞受賞のゾンビ青春小説、『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』は6/19発売。更に、直木賞作家・東山彰良の最新作『DEVIL'S DOOR』も同日発売。両作品の書影は来週には公開されますのでJブックスのHPやtwitterを要チェック!

さて、来週5/24(金)には、とあるホラー映画が公開されます。本日は公開に先駆けて刊行されたノベライズを取り上げます。

というわけで本日の一冊は、鈴木光司原作・杉原憲明脚本・牧野修著『貞子』。



両親による虐待から逃れるために、洞窟の祠で貞子と取引した女・初子は、自身の体に得体の知れぬ存在が宿っていることに気づく。それは新たな災厄の始まりだった。
数十年後。総合医療センターのカウンセリング・ルームで働く秋川茉優は、幼いころ両親の虐待に耐えかねて弟・和真とともに逃げ出し、児童養護施設に保護されたという過去があった。ある日、医療センターに緊急搬送されてきた少女は、ポルターガイストに似た現象を起こす超能力を持っていた。ほとんどコミュニケーションを取ろうとしない少女の正体は、複数の死者が出た火災現場の生存者だった。少女の影には、かつて井戸で死に、ビデオテープの呪いによって多くの人間を呪殺したと語られる女・貞子の姿が見え隠れする。
時を同じくして、茉優の弟・和真は、Youtuberとして生計を立てようとするなかで、心霊スポットへの突入を思いつき、焼身自殺が起きたアパートに侵入するが……。

というわけで、本書はジャパニーズホラーの代名詞『リング』を踏まえた作品になっています。かつてはビデオテープに映った映像が呪いの感染源になり、謎を解く手がかりにもなったわけですが、2019年にはYoutubeの動画が重要な役割を果たすことは言うまでもありません。
意外だったのは、本作が親子をテーマにした作品になっている点です。親から愛情を受けられなかったことが心に大きな影を落としているキャラも多いですし、物語の鍵を握る少女は、見ようによっては、貞子の娘ともいえます。もちろんだからといって本作品がハートフルドラマになり呪いの力が緩むかといえばそんなことはなく、無辜の登場人物たちは次々に恐怖体験に巻き込まれ、理不尽かつおぞましい死を迎えていくのでホラーファンの皆さまはご心配なく。
それにしても、平成の初期、1991年に初登場したキャラクターである貞子が、小説や映画の様々なコンテンツで拡大し平成を通じて日本ホラーの顔となったばかりか、とうとう令和の時代まで生き延びているという事実に驚きの念を隠せません。さっきWikipediaを確認して知ったのですが、この映画化に合わせてスピンオフギャグコミック『貞子さんとさだこちゃん』や動画『【貞子】伊豆大島里帰りの旅〜友だち100人できるかな〜』がWEBに公開されているとのことで、もう国民的キャラクターと言ってもいいのではないでしょうか。願わくは、令和の時代にも、末永く語り継がれるホラーキャラクターが生まれて欲しいものです。