今晩は、ミニキャッパー周平です。第4回ジャンプホラー小説大賞募集〆切(6/30)まであと僅か。応募者の方はぜひラストスパートを頑張って下さい!
さて、これまでこのレビュー欄では(「ホラー」と銘打つ本の絶対数が少ないので)ライトノベルレーベルの本はあまりご紹介できなかったのですが、新刊棚の帯に「パニックホラー×ナゾトキ」の文字が躍っている本があったので、これ幸いとレビューしてみます。
という訳で、本日の一冊は、氷桃甘雪『六人の赤ずきんは今夜食べられる』。
かつて騎兵であったころ、功を焦ったために無辜の人々の殺戮に加担してしまった男は、その罪を悔いながら、猟師として生きている。彼はとある鄙びた村で、村人から恐ろしい話を聞かされる。
今日は一年に一度、満月が赤く染まる日であり、「ジェヴォーダンの獣」と呼ばれる狼が現れて村に住む「赤ずきん」の少女たちを襲って殺す日だ。その狼は、牛よりも大きく、熊よりも凶暴で、人間よりも賢い。村の人々が束になって狩り立てても殺すことができないし、少女たちが逃げ出しても執念深く追って殺す。抗う術はない――その話を聞いた猟師は、村に住む六人の赤ずきんを守り、ジェヴォーダンの獣を狩るため、村の外れにある塔に籠城しようとする。だが、狼の知恵は彼の予測を遥かに上回り、犠牲者が出始める。そして赤ずきんたちの中に「裏切者」の存在さえ見え隠れして……。
という訳で本書は、狼の襲撃から生き延びるホラーサスペンスであると同時に、赤ずきんの中に紛れ込んだ「犯人」を突き止めるミステリ性のある作品でもあります。
狼VS猟師といえば真っ先に思い浮かぶのは銃での戦いですが、何しろこの狼は銃ごときで撃ち殺されるようなヤワな相手ではなく、猟師は知恵によって狼と戦うことになります。とはいえ狼の方も、獲物が地下に逃げ込めば水を流し込む、獲物に忍び寄るために足音を消すなど、獣とは思えない悪辣さであり、単純な罠などたやすく看破されてしまいます。猟師は、6人の赤ずきんがそれぞれ所有する、「硬化」「発火」「透明化」などの特殊な効果をもつ秘薬を用いた策略で、必死の防衛戦を繰り広げます。つまり、ファンタジーの手法で描かれたモンスターパニックホラーなのです。
そして猟師は、迫り来る狼と戦いながら、一見したところか弱い少女にしか見えない赤ずきんたちに紛れ込んでいる「敵」を見つけ出す、という難事にも挑まなければなりません。彼らの籠城した塔は、かつて魔女が暮らしていて、凄惨な拷問が行われていたという超いわくつきの場所ですが、そこに隠されていた手がかりと、狼の挙動から推理することで、真実に辿り着こうとします。夢中で一気読みした私は真相の予想に失敗しましたが、伏線も丁寧に張られていますから、注意深く読めば第3章が終わるまでに「裏切者」の正体を見抜けるはず。ぜひ犯人当てに挑んでみて下さい。