今晩は、ミニキャッパー周平です。この間、CDを借りようと渋谷に向かったところ、ちょうどハロウィンの仮装をした大群衆と出くわして、進むことも脱出することもできない大変な目に遭いました。子どもの頃は日本国内ではそんなにポピュラーだった気がしないので、これほど日本にハロウィンが定着していることに隔世の感を覚えます。
さて、今回は、そんなハロウィンが舞台になった素敵な作品を。SF・ファンタジー作家のロジャー・ゼラズニイによる『虚ろなる十月の夜に』(訳:森瀬繚)です。
19世紀末、ある年の10月。切り裂きジャックに飼われる犬・スナッフの日課は、主人の仕事の手伝い。魔術的な力を持ち、人の言葉を理解するスナッフは、警察や敵対者に追われるジャックを守る番犬でもあり、使い魔でもある。スナッフばかりでなく、近隣では、ネコ・ヘビ・コウモリ・リス・フクロウなど様々な動物が、それぞれの飼い主の使い魔として動き、情報を収集し、何やら準備をしている。動物たちとその飼い主たちは、実は、世界をかけた戦いの参加者なのだ。彼らの正体は、古の神々を復活させようとする≪開く者(オープナー)≫と、それを阻止しようとする≪閉じる者(クローザー)≫。二つの勢力は、ハロウィンの夜に行われる「大いなる儀式」に向けて魔術的な闘争を繰り広げる――。
というわけで、10月1日から10月31日までの戦いの経過を描いた作品です。序盤は次々に喋る動物が登場するファンタジックな絵面ですが、互いに「どちらの陣営に属しているのか」を探り合いながら情報交換をするという、ゲームの準備段階のような内容(登場キャラクター数がかなり多いので、自分で登場人物表を作りながら読んだ方が分かりやすいと思います)。当然ながら読者にも、どのキャラがどちらの陣営に属しているか、なかなか明かされないのでやきもきさせられます。そして新月の夜辺りから参加者がついに衝突を開始。死者や退場者が出始めるとがぜん物語は盛り上がり、大いなる儀式に向けて、一気に加速していきます。
作者の旺盛なサービス精神が満ちている物語でもあり、ジャックを追っている(女装もする)探偵はどう見てもシャーロック・ホームズだし、マッドサイエンティストが死体のパーツを繋ぎ合わせてフランケンシュタインの怪物を作り上げようとしているし、コウモリの飼い主は超常的な能力をもつ「伯爵」だし、満月の夜が近づくと変身しそうになるやつはいるし、とオールスターが夢の競演、といった感があります。その彼らが古の神々、即ちクトゥルーの神々の復活をかけて戦っているという豪華さであり、ゲーム化とか映画化とかしてほしい内容になっています。
11月になってしまいましたが、忙しくてハロウィンを楽しめなかった、という方はぜひ本書で、マジカルなハロウィンを体験してみてはいかがでしょうか。