今晩は、ミニキャッパー周平です。池袋のジュンク堂は大きい上に平日は夜11時まで開いているので超便利です。本を買い逃した時によく利用していますし、このブログも記事が間に合うかどうかピンチ、という時に何度も助けられてきました。皆様も急ぎで本がご必要の際はぜひご利用ください。その時ホラーの棚でうろついているのは私かも知れません。
さて、今回ご紹介するのは、倉狩総『今日はいぬの日』。犬が少年を暖めているキュートな表紙イラストで、帯には「泣けるホラー!」と書かれている本ですが、動物と人間の心暖まる交流を描いたハートフルな作品と思って手に取ると、痛い目を見ることでしょう。
スピッツ犬の「ヒメ」は五人家族である西脇家の飼い犬ですが、子犬だったころは可愛がって貰えていたものの、大きくなった今では餌やりを忘れられたり邪険に扱われたりで、西脇家に不満を募らせています。
そんなある日、ヒメは不思議な石を舐めたことで、人間の言葉を理解し喋ることができるようになりました。これ幸いと一家に隠れてパソコンを使い、インターネットで知識を蓄え、末っ子の雅史にだけ喋れることを明かして彼を手懐けようとする……と、ここまでは、児童文学であってもおかしくないシチュエーションで、近所のネコに愚痴ったり、鼻先で懸命にPCのスイッチを押したりするヒメの姿に、微笑ましささえ感じますが、そんな「ほのぼの感」も長くは続きません。
小学五年生の雅史を自分に従わせるため、ヒメは人間並みの知恵と犬としての身体能力をもって、雅史を精神身体両面で追い詰めます。自分が「しつけ」として西脇家の人々にされたのと同じように――。そう、ヒメを突き動かしていたのは、人間への憤怒でした。ヒメはさらに、身勝手な理由でペットを死なせる人間たちの存在を知ったことで、怒りが爆発! ヒメや犬たちは、ペットを虐待したり、身勝手な理由で捨てたりする人間たちへ、凄惨な復讐を繰り広げていきます。町では野犬がうろつき人間を襲い、無残に引き裂かれ喉笛を噛み千切られた死体が転がり出るのです。そして、犬たちが人間から受けたような「ガスによる処分」にさえ手を出し……果たして犬たちの人間に対する闘争は如何なる結末を迎えるのか?
物語のもう一人の主人公である小高悦哉は、動物管理センターに勤める人間。動物を愛する彼は、動物を殺処分しなければならない自身の立場に懊悩しつつ、軽はずみに動物を買ったり増やしたりしておきながら容易く処分に持ち込む人々に憤りを感じています。彼の眼を通して描かれる、動物たちの置かれた環境は苛烈であり、悪質なペットショップやブリーダーなどといった、現実の問題が次々抉り出されていきます。
ポップな外見ながら、無慈悲なラストに至るまでずしりと重い物語。これから動物を飼おうとするご家族には必読の一冊と言えるでしょう。
(CM)第4回ジャンプホラー小説大賞 絶賛原稿募集中です!