2016年4月23日土曜日

子どもたちの悪夢


 今晩は。ミニキャッパー周平です。もうすぐ連休ですが、皆さん、せっかくのお休みをふいにしないよう、体調管理に気をつけて下さいね。私は熱が38度6分出ています。死にそう!

 新たに一冊本を読む時間がなかったので、今回は緩いくくりで、「子ども」にスポットが当たったホラーを集めてみました。

 まずは昔の作品から。サキ「スレドニ・ヴァシュタール」(『怪奇小説傑作集2』収録)は1910年発表の古典的名作。

 病弱な少年・コンラディンは、唯一の肉親である叔母に隠れて、兎小屋でイタチを飼っていた。彼はイタチを神として崇め、お供えをして、叔母を不幸にしてくれるよう祈っていたのだ。しかしやがて、叔母にイタチの存在がバレてしまい……。
 短いながら、切れ味鋭い結末で、「子どもの残酷さ」が強く浮かび上がる作品。

 ゼナ・ヘンダースン「しーッ!」(『ページをめくれば』収録)は子どもの空想が鍵になった短編。


 子どもが「想像ゲーム」中に思い浮かべたモンスター、<音喰い>が実体化してしまう。掃除機のような姿をした<音喰い>は、あらゆる「音を出すもの」を吸い込んでしまうのだ。子どもとベビーシッターは音をたてないように、怪物から逃げ出そうとする。
 はじめはユーモラスな印象さえある<音喰い>が、その力を発揮する中でどんどん恐ろしい存在になっていくのが見事です。

 パトリック・マグラア「失われた探険家」(『失われた探険家』収録)は世界幻想文学大賞の受賞作。

 自宅の裏庭で、(なぜか時間と距離を越えて)コンゴ探検中の瀕死の探険家を見つけてしまった少女の物語。重い伝染病にかかり、意識を取り戻さない探険家に対して、少女は両親から隠れて手厚い看病を行うが……。
 普通の民家の裏庭がジャングルの奥地と溶け合う、白昼夢のような世界が楽しめる異様な傑作です。

 レイ・ブラッドベリ「ぼくの地下室へおいで」(『スはスペースのス』収録)は萩尾望都がコミカライズもした有名作。

 ある夫婦の家に届いた小包は、キノコ栽培キットだった。夫婦の一人息子であるトムは、地下室でキノコを育て始める。トムの熱中ぶりに不安になる父親だが、時を同じくして友人が失踪し、「絶対に小包を受けとるな」と書かれた電報が届く。
 不安を募らせていく父親に対して、どこまでも無邪気な子どもが不気味な一篇。

 ジェローム・ビクスビイ「きょうも上天気」(『きょうも上天気』収録)は、恐ろしい子ども(いわゆる「アンファンテリブルもの」)テーマの代表作と呼べるSFホラー。

 人口五十人たらずの小さな村。そこに暮らす人々は皆、幼いアントニー坊やのご機嫌を伺いながら暮らしていた。なぜならアントニー坊やはテレパシーやテレキネシスなど絶大な超能力をもっており、機嫌を損ねた人間は即座に超能力で殺されてしまうからだった。
 地獄のような環境にいながら、子どもに目をつけられないよう、大人たちはみな幸福であるように装っている、というブラックな味わいの強い作品。

 ちなみに平井和正「赤ん暴君」(『月光学園』収録)はアントニー坊やよりもずっと幼い分、邪悪度のさらに高い、そんな超能力ベビーが暴虐の限りを尽くす作品で、こちらも一読忘れがたい恐怖感がある、お勧め短編です。

 90年代・00年代に多くのホラー短編を発表した村田基は、子どもをテーマにした作品も多く書きましたが、ここでは「都市に棲む獣」(『愛の衝撃』収録)をご紹介。


 東京のど真ん中で、犬や猫が何物かに襲われ、食べられるという事件が連続して発生。当初は何らかの猛獣によるものと思われていたが、目撃証言などから、犯人は野生化した犬のように振舞う、人間の子どもだったことが判明する。
 なぜ、普通の子どもが凶暴な「都市に棲む獣」になったのか。それを解き明かすミステリ的な側面もある一本です。

 トリを飾るのは、子どもテーマのホラーとして忘れちゃいけない名品、小松左京「お召し」(『物体O』収録)。

 ある日突然、世界から十二才より上の人間がすべて消えてしまう。両親や教師や兄姉など、頼れる相手を無くした小学生以下の子どもたちは、交通機関をはじめとするインフラが使えなくなった世界で、連携をとり、事態に対処しようとする。
 原因不明の災厄に対して(最後まで大人消失の原因は明かされません)最善を尽くそうとする子どもたちの姿が胸に焼きつく、感動的ですらある作品。

 子どもが題材の作品、というとジュブナイルや児童文学ばかりを連想してしまうかも知れませんが、「子ども」のどんな部分を切り取るか次第で、上記作品のように、大人も怖がるようなホラーを作り出すことができます。ホラー賞応募者の皆さんは、ぜひ参考にしてくださいね。

 今はフラフラですが、風邪を治して、来週は元気にブログを更新できるようがんばります!!



(※書影はAmazonより流用しました。『愛の衝撃』のみ私物の画像です)