今晩は、ミニキャッパー周平です。書店で気になった本はとりあえず冒頭を立ち読みしてみる派です。今回ご紹介する本は、開くといきなり、「WARNING 本書は成人の読者を想定して書かれた、過激なホラー小説です。(略)過激な表現を好まない方や、ショックを受けたり気分を害しやすい方は、ご注意ください」との、「警告文」が掲載されています。次のページをめくると、「幅広いホラーファンに届く作品を書くつもりだったが、書いているうちに本当に恐ろしい物語になってしまった」「この作品の内容は物議を醸すだろう」的な「著者からのメッセージ」が、共作なので二人分並んでいます。物語が始まる前からこんなに連続で脅かされる作品もあまりないでしょう。
というわけで、今回のテーマはマット・ショー/マイケル・ブレイ作、関麻衣子訳『ネクロフィリアの食卓』。
ガソリンスタンドの売店で働くクリスティーナは、1991年から現在(2014年)まで長きに渡って続いている連続失踪事件に、強い関心をもっていた。ホラー小説ファンでもあったクリスティーナは、ガソリンスタンドに訪れる客を殺人鬼に見立てる「遊び」を繰り返しているうちに、運悪く連続失踪事件の真犯人である老人と老女に遭遇し、拉致されてしまう。
クリスティーナが目覚めたのは森の中の家。叫び声を上げても誰も助けに来ず、厳重に封鎖されていて逃げ出すこともできない。家の住人は、老人と老女、そして彼らの息子――人間の皮でできたマスクを被った、二メートルを超す長身の怪物――だった。クリスティーナは、同じく拉致されてきた会社員の男性・ライアンとともに、息子の「誕生日」に必要とされたのだった。地獄の誕生日パーティーが始まる――
この物語は、ファンタジー・超自然の要素を一切含まず、徹頭徹尾、現実に存在しうる(性的なものも含む)暴力と殺戮の姿を描いた鬼畜系ホラーとなっています。
作中、もっとも精神に与えるダメージが大きい箇所は、「怪物」の誕生を描く章。夫から陰惨なまでの虐待を受けながら、逃げることも自殺することもできず、泥沼に嵌まっていく女性の姿を描いており、その臨場感に欝々とした気持ちになること必至です。特に、子供だけは守ろうとしていたのに、だんだん心が麻痺していく辺りの嫌なリアリティは強烈です。
しかし最大の見せ場はやはり誕生日パーティー。「メインディッシュは生きた人間」と帯でうたわれているので、カニバリズム描写は予想できると思います。しかし、「人間バースデーケーキ」に蝋燭を立てるために切れ込みを入れて……という箇所には、絵面のエグさにページから目を逸らしたくなりました。
暴力描写、精神的な痛めつけが強く、冒頭の警告文も納得の内容といえます。警告文に怯まない方はお楽しみください。
そして、カニバリズム描写といえば、第1回ジャンプホラー小説大賞銅賞受賞作『ピュグマリオンは種を蒔く』電子書籍で発売中。こちらもよろしくお願いいたします。