今晩は。ミニキャッパー周平です。第2回ジャンプホラー小説大賞〆切まであと19日です。
WEB応募もできますので、ぜひぜひ挑戦してみてください!!
さて、この前、深夜にテレビをつけていたら、ホラーアニメ『迷家-マヨイガ-』が目に留まりました。マヨイガ(マヨヒガ)とは元々、柳田國男が「遠野物語」で取り上げて有名になった伝承――道に迷った人が辿り着く無人の家で、そこに訪れた者に幸運をもたらす、というもの――ですが、様々なアレンジを加えて、現代でもホラー作品によく登場します。
というわけで、今回は、黒史郎『失物屋マヨヒガ』をご紹介。
行き止まりの路地の奥、誰も知らない商店街に、駄菓子屋「マヨヒガ」が存在する。
その店には、誰かが「失くしてしまった」あらゆるもの(子どもの頃に作った粘土細工や、捨てたはずの日記、排水溝に流したはずの結婚指輪、などなど)が商品として並べられている。その商店街に迷い込んで、「マヨヒガ」に辿り着いた人々は、自分が失った大切なものを買い戻そうとする。ただし、買い戻すために必要な代価はお金ではなく、「商品と同等の価値をもつもの」。たとえば、大切な誰かの命を取り戻したければ、同じくらい大切な誰かの命を渡さなければならない。また、ルールに反し、代価を払わず商品を手にいれようとした人間は、怪物に姿を変えられ、永遠に商店街をさまようことになる。
「マヨヒガ」には、己の失ったものを買い戻すため、様々な客が訪れる。
小学生の男の子は、事故によって半年前に亡くなった「父親」を。
チンピラの男は、幼いころ虐待によって失った「味覚」を。
老人は、かつて想い人に送ろうとした、メッセージの記された「切手」を。
失くしたものを求める人々それぞれの、不思議な体験の結末は、物語の後半で緩やかに繋がっていく……。
設定自体は、悪魔との取引のように、「何かを手に入れるために何かを犠牲にしなければならない」というものなので、ブラックな物語になりそうですが、昭和の装いに満ちた商店街の光景や、子ども時代の記憶をくすぐるエピソードの数々に、何よりも「懐かしさ」を喚起させる作品になっています。
「ムカデのように何本も腕を生やした黒衣の女」「首のかわりに向日葵を咲かせた犬」「大量の注射器をリヤカーに載せて運ぶ、緑色のぬめぬめした肌の子ども」などなど、商店街を闊歩する者たちの姿は、異様ですが、恐怖を感じさせるというよりも、幻想的で、こちらの想像力をかきたてます。そのファンタジックなムードはどこか『千と千尋の神隠し』めいています。
大人になってしまったらもう取り戻せない、世界が輝きに満ちていた日々。それを鮮やかに呼び覚ます、素敵な一冊です。
応募〆切までの更新はあとわずか2回。次に何を紹介するか、悩みに悩む一週間になりそうです。
(※書影はAmazonより引用しました。)