2015年2月11日水曜日

第7回 時間ホラーあれこれ

 今晩は。毎度おなじみ、ジャンプホラー小説大賞宣伝隊長のミニキャッパー周平です。
 当ブログ、本当はあと3回くらい時間ホラーで行きたかったんですが、上司から「時間ネタばかりで引っ張りすぎ!」とさすがに怒られたので、今回は「時間ホラー」の最終回として様々なお勧めを無理やり詰め込んでご紹介します。



片瀬二郎「00:00:00.01pm」(『サムライ・ポテト』収録)は、「時間の減速」に巻き込まれた男の話。
自分以外の人間がほとんど停止してしまっていて、なんのコミュニケーションもとれなくなってしまった世界で、一人孤独にさまよい続ける男が出会ってしまった狂気とは。背筋も凍るような、凄惨にして異様な光景が街中に現出します。スプラッター描写が大丈夫な人はどうぞ。




法条遙『リライト』は「バッドエンド版時をかける少女」というぶっとんだ煽りのタイムトラベルホラー。
とある少女の、「未来から来たという少年の手伝いをしてあげた」青春時代の甘い記憶……の裏には、エグい真相が。読んでいる間、心に浮かぶ違和感・疑問符はじょじょに大きくなっていき、過去の真実が明かされる終幕では、すべてが繋がった驚き・納得とともに、最悪の読後感を与えられることでしょう。



 古橋秀之「恋する死者の夜」(『ある日、爆弾がおちてきて』収録)は、恋するゾンビとともに、過去の思い出を繰り返す物語。
「死者が蘇り、意思のないままに、生きていた頃の『ある一日』と同じ行動を繰り返す」ようになった世界。生ける屍となった少女とのデートを日々繰り返す主人公の悲哀と、ゆっくりと破滅に向かっていく世界の寂しさが胸を打ちます。





ラストは御影瑛路『虚ろの箱と零のマリア』シリーズの第1巻。
時間を巻き戻し続けている「犯人」が登場人物の中にいて、その正体を突き止めるホラーサスペンス、という点では、割とオーソドックスなループものですが、この作品のキモは「ループ間での時系列」を大胆にスキップ・シャッフルした驚きの構成。その驚愕の手法によって開始数ページで起きている事態とヒロインの絶望を読者の心にザクリと突きつけてきます。書店で見かけたらとりあえず16ページから18ページまで読んでみてください。私はそこを読んでレジに走りました。



 ホラー以外でも、時間に纏わる作品がもっと知りたいという方は、アンソロジー『不思議の扉 時をかける恋』『不思議の扉 時間がいっぱい』(ともに大森望編)の巻末解説で詳しく紹介されているので、そちらを読んでみてください。
 また、前者には乙一「Calling You」、後者には牧野修「おもひで女」なども収録されており、バラエティ豊かなお勧めの作品集です。
 


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 各作品の書影はAmazonより引用しました。