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2017年12月9日土曜日

その力は殺意を沸騰させる――日向奈くらら『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』

今晩は、ミニキャッパー周平です。タイトルが印象的な本というのは、ついつい手にとってしまいがちなものです。ホラーでいえば、『メドゥサ、鏡をごらん』『独白するユニバーサル横メルカトル』『ずっとお城で暮らしてる』などのタイトルが個人的にお気に入りです。今回ご紹介する本も、タイトルインパクト抜群。

というわけで今日の一冊は、日向奈くらら『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。』です。



南城高校2年C組担任の教師・北原奈保子は、2学期が始まる直前に、自身の生徒のうち4人が謎の失踪を遂げてしまったことで憔悴していた。更に9月2日の深夜、別の生徒たちから奈保子のもとに、助けを求めるLINEが届く。夜の校舎に駆けつけ、クラスに辿り着いた彼女を待ち構えていたのは、カッターや箒やバットや三角定規など、教室内のありとあらゆるものを用いて殺し合いを果たした24人の生徒の死体だった。

絶望の中で奈保子は、1学期には平穏だったクラスの雰囲気を一変させた事件、ある女生徒に対する攻撃が始まった日のことを思い出す。一方、事件の捜査に乗り出した埼玉県警の野々村刑事は、C組内で、クラスぐるみの苛烈ないじめが発生していたこと、それが大量死の真相に繋がっていることに気付く。

学園ホラーといえば、呪いなどで生徒がひとりまたひとりと死んでいく展開が定番ですが、この小説はタイトル通り、冒頭でいきなり24人死んでいます。この時点で既に、失踪中の4人を残してクラスが壊滅しているのですが、24人を死なせた「超常的な力」の存在を教師と刑事が追ううちに、犠牲者はクラス外学校外にまで広がり更に増えていきます。肉親さえ殺し合わせるその「力」が生み出す死に様、殺され方は相当に痛々しいです(絵面的にも、精神的にも)。

ただ超常的な部分以外でも、読者の背筋を寒くさせる要素は多数あり、たとえばいじめの内容もSNS上での中傷やクラス内での暴力行為に留まらず、拉致監禁した上での薬品を使った拷問など、常軌を逸したものです。そのうえ、事件の真相を追いかける側の野々村刑事も、もともと暴力への欲求にとりつかれており、実娘に対して手を上げるなど危うい性質を備えていて、破滅へまっしぐらに向かっていきます。この作品で描き出され、あぶり出されていくのは、人間のもつ根源的な「暴力へ向かう衝動」そのものの「怖さ」なのです。


しかしながら、物語の根幹にあるのは、強者に虐げられた者たちの儚い連帯と反撃であり、そこには恐怖とともに、深い悲しみも隠されています。28人中24人までが第1章で死ぬクラスに、生存者や希望は残されるのかどうか、ぜひ見届けてみてください。

2016年5月28日土曜日

聖職者の殺戮劇――『悪の教典』


 今晩は。ミニキャッパー周平です。
 第2回ジャンプホラー小説大賞締切まであと1ヶ月!! 
 WEB応募も受付中ですので、ぜひぜひお気軽にご応募ください!!
 
 さて、前回は短めの作品だったので、今回は特大ボリュームの作品をご紹介。映像化もされたサイコホラーの傑作、貴志祐介『悪の教典』です。






 高校の英語教師・蓮実聖司は、分かりやすい授業と高い問題解決能力によって、多くの生徒の心を掴んでいる、学校の人気者だった。しかし彼は、人身掌握術を用いて他人をコントロールし、対立する教師や問題児を、罠と陰謀で排除するという、危険な素顔をもっていた。その正体に気付き始めた生徒たちを、蓮実の魔手が襲う。

 本作品でもっとも読者を引き付けるのは、邪悪にしてエキセントリックな、蓮実のキャラクター性でしょう。物語の序盤では、生徒の抱えるトラブルを敏感に察知し、それをチート的な速度で解決していく、という、教師の理想形のような有能な人物として描かれ、最初はまるで熱血教師ドラマを読んでいるような錯覚を覚えます。しかし、「邪魔な相手を学校から消すためには、ゆすりなどの犯罪行為や、殺人さえ厭わない」という、彼のスタンスが読者に示されると、物語は一転、不穏なムードに包まれるのです。

 そして明かされていく蓮実の遍歴。他人への共感能力を全く持っておらず、幼少の頃より膨大な数の殺人を犯しながら、自殺や事故に見せかけたり他人に罪をなすりつけたりして、完全に逃げおおせてきた。そんな戦慄すべき過去に、「これから学校内で蓮実が起こすこと」のおぞましさに読者は薄々感づきつつも、先を読まずにはいられないでしょう。

 蓮実の手によって、学校周辺で「悲劇」が起こり、その真実に気づいた者が次の「悲劇」の犠牲者になる、という連鎖反応によって、転がり始めた雪玉のように犠牲者の数は膨らみ続けます。そして物語の後半で蓮実はとうとう、自身の担当するクラスの生徒を「皆殺し」にするという、常軌を逸した決断を下します。

 そこからの展開はもはやジェットコースター的な勢いです。決して豹変したりはせず、授業中とまったく同じように、明るいテンションで英語を交えて語りかけながら、殺戮を繰り広げていくその姿は、まさにモンスター。死体の山が築かれる中、蓮実が悪魔的な知能によって張り巡らせた罠・トリックをかいくぐって、生徒たちは生還することができるのか……。続けざまに襲い来る恐怖に震えながらも、ページを繰る手が止まりません。

 (文庫版で)上下巻900ページ越えという大作ですが、いったん読み始めたら、寝食を惜しんで没頭してしまうような小説なので、ぜひ、お休みの日に手に取ることをお勧めします。



(※書影はAmazonより引用しました。)

2016年1月9日土曜日

ようこそ、殺戮とセックスの教室へ――倉阪鬼一郎『殺人鬼教室 BAD』


あけましておめでとうございます。ミニキャッパー周平です。
本年も、ジャンプホラー小説大賞を盛り上げるため、様々なホラーを紹介して参ります。

新年一発目なので、今回はとびっきり破壊力の高い作品を取り上げましょう。
お題は、倉阪鬼一郎『殺人鬼教室 BAD』。



これまでご紹介したホラーのなかでも一番過激な――映画だったら間違いなく、R-18になるようなものです。

という訳で本日のブログは、18歳未満と、心臓の弱い方は閲覧注意。

とある学園での「歴史」の授業中……教師は、「昔の刑罰の実験」と称して、男子生徒をいきなり電気椅子に座らせる。

しかし、男子生徒は期待に満ちた顔で処刑を迎え入れ、クラスメートたちは興奮と歓喜に包まれてそれを見守る。電流が流され、彼の死が確認されると、クラスメートたちは一斉に拍手する――この異様なシーンから始まって、

「体育」の授業では老人の首に縄を掛けて引きずって競争し、「音楽」の授業では死者の断末魔をもとに曲を作る、などなど。

もの凄くエグい内容が、生徒の一人である主人公の視点から、何の疑問も差し挟まれないまま語られていく。なぜなら、この学園では「死は最大の快楽である」と教えられているから。

「死」に対する扱いが異常なばかりでなく、「性」に関する扱いも普通ではない。この学園では場所も時間も問わず、あちらこちらで、多人数での性行為が行われている。だが、誰もそのことに疑問を持っていないどころか、奨励さえされている。なぜなら、死と性の快楽こそが神への奉仕になると信じられているから。

このセックス&バイオレンスな、倫理観がぶっ壊れた学園は、世界は、一体何なのか……という、読者が当然抱くであろう疑問、謎の追求こそが、本作品の核となります。

ただし、その道のりも並大抵のものではありません。この社会に疑問を抱いた人間は、秘密裏に消されるか、公開処刑されてしまいます。世界の秘密を知ろうと冒険に出かけた少年は、瀕死の状態で帰り着いて、今際の際にたった一文字「G」と書き残して死亡。主人公たち<世界の秘密>研究会の面々も、次々に惨たらしい死を迎えます。

非道徳的な光景が次々に現れるおぞましい内容である一方、ディストピアとの対峙、世界の秘密を暴こうとする若者の冒険、という非常にまっすぐなドラマが根幹にあることは見逃せません。「恐怖」と「愛」の感情を禁じられたこの世界で、冒険の果て、主人公が最後に手に入れるものは……? 主人公の想いに、心を揺さぶられること必至のラスト。エロスとバイオレンス、あとスプラッターが大丈夫な方にはお勧めです。

さて次回は……と予告したいところですが、何も決まってないので、明日書店をめぐって決めてきます。とりあえずR-18じゃない本で。

(※書影はAmazonより引用しました。)

2015年1月9日金曜日

学園ホラー編(3)『Another』

  
 ホラーにも「萌え」があっていいと思うんです。
 むしろキャラの魅力は、極限状況下でこそ輝くのです!

 ……失礼、少し取り乱しました。

 ホラー作品の一部には、圧倒的な存在感で、読者の心に強い印象を残すキャラクターがいます。自分はどうしても女性キャラにばかり目が行ってしまいますが、小説だとレ・ファニュの創り上げたカーミラとか、フョードル・ソログープの『毒の園』のヒロインとか、漫画だと『黄昏乙女×アムネジア』の庚夕子とかが、私にとってイイネ!ボタンを10回くらい押したいキャラです。そして、綾辻行人が生み出した本作のヒロインも、また。

 という訳で、学園ホラー編、第3回目は綾辻行人『Another』。
  漫画化やアニメ化もされた大ヒット作です。



 家庭の事情で、東京から、地方の夜見北中学校に転校してきた恒一。しかし、転入先のクラスメートたちは何かを隠しているようで……更に、恒一が眼帯姿のとある少女に近づいたことから、彼の運命は狂い始める。級友や教師たちの異様な行動と、相次ぐ死の待ち受ける、悪夢の学校生活へ向かって。

 優れたホラーでありながら、ミステリの名匠・綾辻行人の手腕が存分に発揮された作品でもあります。
 前半では、「何が起きているのか」を理解できず恐怖に翻弄される主人公の姿が描かれます。しかし、主人公が超自然的な現象を「ルール」として受け入れた後半からは、サスペンスホラーでありながら、元凶を突きとめ、事態を止めようとするミステリ的な側面が現れます。終盤に訪れる驚愕も、ミステリの手練ならではの仕掛けです。

 そして先述の通り、ヒロインである「見崎鳴」の存在感。
 初見の浮世離れした妖しさや儚さは勿論のこと。主人公の目を通じて描かれる彼女の姿は、謎のベールに包まれた前半から、正体の何割かが明らかになる中盤、真意が明かされる後半と、刻々とその印象を変えていき、読者はそれを追体験していくことになります。計算された「見せ方」で提示されるそのキャラ造形に、惹きつけられずにはいられません。これは萌えだと思います!

 なお、ジャンプホラー小説大賞でも、私がキャラにオリジナリティと魅力を感じた作品は、問答無用で一次審査を通過させます。


 さて、『学園ホラー編』はここでいったん休憩。次回からのキーワードは「時間」です。

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2015年1月6日火曜日

学園ホラー編(2)『ラガド 煉獄の教室』

 物語を愛する皆様、こんばんは。JBOOKS編集部員のミニキャッパー周平です。

 普通の小説は、その物語にのめり込んでいる読者や、その作品を読み終えた読者の心を動かすものです。
 けれど、世の中には、書店でパラパラめくっているだけで「?!」と驚かされ、慌ててレジまで運ばされてしまう、そういう「普通ではない」特徴を持った本もあるのです。

 たとえば、文庫で400ページくらいの物語の中に(絵ではなく)「図」が100枚近く収められている、とか。

 という訳で、今宵ご紹介するのは「学園ホラー」というよりも「教室ホラー」とでも呼ぶべき異色作、両角長彦『ラガド 煉獄の教室』です。



 高校の教室に刃物を持った男が侵入し、一人の女子生徒が刺殺された。犯人逮捕ののち、警察やマスコミによって、犯行当時の状況を再現する実験が行われる。
 ところが、犯人の供述も、生き延びた生徒たちの証言も、なぜか曖昧だったり互いに矛盾していたり、信頼が置けない。
 手がかりや新証言のたびに、『再現』される状況は二転三転する。真相究明は混迷を極め、警察やマスコミが右往左往させられる中、過去に起こった悲劇や、教室内の闇が暴き出されていく……。

 先に述べた「図」とは、凶行が行われた際の教室での生徒・犯人の動きを示した見取り図。様々な推理・推測によって目まぐるしく変わっていく、「犯行当時の教室内で何が起こっていたか」の仮説を読者に提示する役割を果たしています。

 この膨大な図に加えて、生徒たち、教師、保護者、警察、マスコミなど次々に焦点を変えていくプロット、時折挟まれるインタビューや尋問形式での語りも相まって、迷宮に誘われるような読書体験を味わえるはずです。

 そういった特殊形式を積み上げて、辿り着くその「瞬間」――物語の終盤近くで示される、凶行時の教室の異様な「光景」には、戦慄を禁じえません。実はミステリの新人賞を受賞した作品なのですが、超常的な部分もあり、審査員も「SFやホラーの志向性を」見抜き、更に(前回ご紹介した)『六番目の小夜子』の体育館シーンにも似た戦慄を感じ取ったとのこと。私自身も、この作品は恐るべき「決定的な一瞬」めがけて構成された、異色のホラーとして取り上げさせてもらいました。


 さて、実は先ほど述べた、この作品を評価された審査員というのはミステリ作家の綾辻行人先生なのです。という訳で次回ご紹介するのは、綾辻行人先生の学園ホラー……と言えば?




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2014年12月25日木曜日

学園ホラー編(1)『六番目の小夜子』


 物語を愛する皆様、始めまして。JUMPjBOOKS編集部員のミニキャッパー周平です。
本日より始まりました当ブログは、『ジャンプホラー小説大賞』の宣伝隊長に命ぜられた私が、心に残るホラー作品を突発的に紹介していく不定期企画です。

 最初のお題は、「学園ホラー」。

 学校って、ものすごく怖い場所だと思うんです。
 未成熟な人間関係、受験や将来への不安、同級生へのコンプレックス、などなど、無数の理不尽に対する「恐怖」が潜んでいる場所だから。
 そんな「学校」という空間に、影を引きずり出すような秘密の儀式が持ち込まれたとき、呼び起こされるのは……。

 という訳で、「ミニキャッパー周平の百物語」、第1回にご紹介するのは学園ホラーの傑作、恩田陸『六番目の小夜子』です。


  舞台となる高校の、三年生の間に長年受け継がれている「儀式」は、作中ではトランプのゲームにたとえて説明されていますが、今だと「人狼ゲーム」を思い浮かべると理解しやすいかも知れません。「人狼」が正体を見破られないように「村人」の一定人数を消せば勝利、というのと同じ要領で、「サヨコ」に選ばれた生徒が一般生徒を騙し切って、一年に渡る儀式をやり遂げたら「サヨコ」の勝利、というわけです。

 2代目の「サヨコ」は事故死しているという、いわくも伝わる、このしきたり。
 6代目の「サヨコ」に選ばれた生徒が、始業式の早朝、最初の「儀式」を行うため教室に忍び込むと、そこには見知らぬ少女の姿が。転入生であるその少女は、「沙世子」という名前だった。
 儀式の行方は? 沙世子の正体は? 真実に近づこうとした者に襲い掛かるのは……?
複数の謎を追いながらのサスペンスフルな展開と、高校三年生の焦りや迷いを掬い上げる、丁寧な心象描写が魅力の作品。

 しかし、この作品の白眉はなんといっても、「サヨコ」に課せられる儀式のひとつである、「演劇」の場面。
 ストーリーの中盤。体育館において全校生徒の目の前で、(思いもよらぬ方法で)行われる劇「六番目の小夜子」上演シーンは、噂の中の存在でしかない「サヨコ」がまるで実体を持ち、その肉声を読者の耳にまで届けてくるようで、まさに鳥肌もの。日本ホラー史でも屈指の名場面として、伝説になっています。
 私は中1の時に読んで泣きそうになりました。神シーンです。あの場面を体験するために、是非手にとって欲しい一冊。


 これから、不定期にホラー作品をご紹介していきます。今後、基本的には深夜2時に更新の予定です。

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